研究概要 |
今年度は,(1)植物の機能をヒントにしたユニークなセンサ素材の開発と(2)植物機能の工学的応用に関する両テーマを並行させながら遂行した.(1)では,全三段階のうちの最終段階(素材の応用例を提示)まで進んだ.また,(2)の植物機能の工学的応用に関する研究では,植物フィトクロムAの機能からユニークなセンサ概念を提示した.(1)及び(2)とこれまでの成果から,植物機能の工学的応用に関する「植物模倣工学」という新しい領域の方向性を立てた.今年度の補助金は,主にセンサ素材を製作するための材料や装置と自動測定システムの構築(ソフトウェアも含む)に充てられた. 1.センサ素材の開発では,植物フィトクロムAが「光受容体であるにも関わらず,光に対して生化学的に不安定」という性質を積極的に利用し,工学のセンサへ応用することを試みた,試行錯誤の実験の結果,検出パラメータの変化に対して不安定な構造を有するものの,電気的には極めて安定な抵抗値を有する素材を開発し,植物の機能を工学へ応用する一方法を明らかにした.この成果は国内の会議で発表し,査読付論文誌に投稿中である.この研究に関し,素材を製作する装置及び素材の抵抗値測定のための自動計測システム構築の関係などに補助金を充てた. 2.植物機能の工学的応用に関する研究では,1で開発したセンサ素材の一応用例として「センサ付き書類入れ」を提示した.書類などを不正に閲覧する行為を検出する書類システムを試作し,センサ素材の機能が正しく動作していることを確認するための実験を行った.また,このような不正検出の方法及びシステムのニーズについてアンケート調査を実施し,そのニーズを明らかにした.その成果は,国内の会議で発表し,査読付論文誌に投稿中である.この研究に関し,実験用試料製作,長期測定システムの製作,アンケートにおけるプレゼンテーション用のソフトウェアなどに補助金を充てた.
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