花の相称性を支配する遺伝的メカニズムとその進化機構の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03J06945
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 福田 達哉 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
• キーワード: 系統進化 / 分子進化 / 形態形成 / 被子植物 / 左右相称花 / 放射相称花 / 遺伝子発現 / 遺伝子重複

研究概要

本研究では、被子植物の形態の多様化を導いた進化現象のうち、被子植物の様々な分類群で並行的に起こっている花の相称性の進化に着目し、マメ科植物でcycloideaと相同な遺伝子を単離することを目的として研究を行った。その結果得られたマメ科植物cycloidea相同遺伝子には、キンギョソウおよびホソバウンランの相同遺伝子で保存されている2つのドメイン(TCPドメインとRドメイン)を含むことが明らかになり、アミノ酸レベルでcycloideaと60%、特に保存領域である両ドメインでは80%以上の高い相同性を示した。また、このTCPドメインとRドメインをもつ既知の全ての配列を用いて遺伝子系統樹を作成した結果、マメ科植物のcycloidea相同遺伝子だけで構成されるクレードと、マメ科植物のcycloidea相同遺伝子と他の分類群の遺伝子を含むクレードが構成されることが明らかになった。この系統解析の結果から、多重遺伝子族を形成していることが明らかとなったマメ科植物のcycloidea相同遺伝子が、マメ科植物の花の進化においてどのように関与しているかを系統進化学的に考察するために、本研究の結果から得られたcycloidea相同遺伝子の遺伝子系統樹と葉緑体遺伝子rbcLの系統解析の結果をTreeMaPを用いて比較した。その結果、マメ科植物への系統進化とcycloidea相同遺伝子の多重遺伝子族の形成が相関することが明らかになった。この結果は、マメ科植物が進化した際に、cycloidea相同遺伝子が複数回重複を起こしたことを示しており、数多くのcycloidea相同遺伝子が関与してマメ科植物の特徴的で複雑な左右相称性を示す蝶形花が形成されてきた可能性が高いことが推察された。

研究成果

• [文献書誌] Fukuda, T., et al.: "The evolutionary origin of indeterminate leaves in Meliaceae : phylogenetic relationships among species in the genera Chisocheton and Guarea, as inferred from sequences of chloroplast DNA."International Journal of Plant Science. 164. 13-24 (2003)
• [文献書誌] Fukuda, T., et al.: "Molecular evolution of cycloidea-like genes in Fabaceae."Journal of Molecular Evolution. 57. 588-597 (2003)
• [文献書誌] Tsukaya, H., et al.: "Hybridization and introgression between Callicarpa japonica and C.mollis (Verbenaceae) in central Japan, as inferred from nuclear and chloroplast DNA sequences."Molecular Ecology. 12. 3003-3011 (2003)
• [文献書誌] Teshima, H., et al.: "The evolution of extreme shell shape variation in the land snail Ainohelix editha : a phylogeny and hybrid zone analysis."Molecular Ecology. 12. 1869-1878 (2003)
• [文献書誌] Yokoyama, J., et al.: "Morphological and molrcular variation of Mitchella undulata Sieblod et Zucc., with special reference to systematic treatment of the dwarf form from Yakushima Island."Journal of Plant Research. 116. 309-316 (2003)