RecQヘリカーゼファミリー遺伝子は、人ではブルーム症候群原因遺伝子、ウエルナー症候群原因遺伝子、ロスモンド・トムソン症候群を含めて五つ存在すると考えられているが、出芽酵母ではSGS1のみが存在する。本研究では出芽酵母Sgs1の機能の解析という点から、これら症候群の発祥機構に新たな知見が得られることを目的としている。当研究室ではこのSgs1と様々な遺伝子との遺伝学的解析を行ってきたが、その中でSMC6の変異により、sgs1変異株の細胞増殖が悪化することが見出された。そこでSgs1の機能を、Smc6との機能的関連から明らかにするために、Smc6の機能の解析を行った。SMC(structural maintenance of chromosomes)family蛋白質は細胞周期に伴う染色体の高次構造を変化させる機能を持つと考えられており、現在までに姉妹染色体同士の接着に必要とされるコヒーシン(Smc1/Smc3)複合体やM期の染色体凝集に必要とされるコンデンシン(Smc2/Smc4)複合体などが同定されている。本研究の対象であるSmc6はSmc5と複合体を形成しており、アミノ酸配列や蛋白質の高次構造が他のSMC蛋白質と類似している。そのため、コヒーシン、コンデンシンに続く3種類目のSMC複合体とされているが、その詳細な細胞内の機能については明らかになっていない。SMC6は生存に必須であるので、温度感受性変異株であるsmc6-56を単離し、解析を行った。smc6-56はMMS、MMC、UV、HU、ZeocinなどのDNA傷害剤に感受性を示すことから、Smc6がDNA修復に関与すると考えられた。さらに既知のDNA修復経路に属する遺伝子とのepistasis testを行ったところ、相同組換えに関与するRad52、Rad51と同じ経路で機能することが考えられた。さらに、MMSなどのDNAに傷害を与えた際の組換え体の形成に関与していることが明らかになった。
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