研究概要 |
Porphyromonas gingivalisがgingipainを介して宿主防御機構をエスケープし、病原性を発揮する。これまでの研究成果から、gingipainはCD14およびICAM-1を酵素分解することで、ヒト歯肉線維芽細胞およびヒト口腔上皮細胞が病原性微生物に対して、自然免疫が不応答に陥ることを見いだした。そこで自然免疫および獲得免疫の誘導に積極的に関与する樹状細胞(DC)に及ぼすP.gingivalisの細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(PGN)とLPSの影響について検討した。PGNはFreund complete adjuvantの細胞性免疫誘導作用に担っており、その活性中心のムラミルジペプチド(MDP)とジアミノピメリン酸含有デスムラミルペプチド(FK565)は細胞内レセプターnucleotide-binding oligomerization domain (Nod)1とNod2により認識される。ヒトDCをMDPおよびFK565とToll-like receptor (TLR) 3,4および9リガンドを共に刺激すると、IL-12p70とIFN-γが相乗的に生産され、その上清をヒト末梢血T細胞に刺激すると相乗的にIFN-γが生産されることを見いだした。それに対して、IL-8,CD40,CD83,CD80,CD86および膜結合型IL-15発現の相乗作用は見られなかった。同作用はTLR2リガンドでは見られなかった。以上の結果から、Nodは宿主はほぼ全ての微生物に含まれるPGNを認識することで、TLRリガンドによる刺激を増強させ自然免疫応答を促進させるアジュバントとして作用していると示唆される。
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