臨床の各種治療処置は、その治療のためにターゲットとなる組織の力学環境を変化させる。より良い処置を計画するためには、その変化させられた力学的応力に対する細胞の応答を理解することが重要であると考えられる。固着は心臓血管病治療で用いられるステントに代表されるインプラントデバイスの結果として生体組織上に引き起こされる拘束のひとつの例である。これは結果として新たな応力・ひずみ場を生成し、それらの強い勾配を引き起こす可能性がある。中心部にzero-displacementの境界条件によって表現された固着領域を有する直交異方性の円形膜内の応力分布を、有限変形理論に基づいてモデル化した非線形常微分方程式を数値的手法により解いた。その結果、固着の存在が、強い応力勾配を引き起こすことを確認した。さらに、その応力分布は、固着領域のサイズ、および、材料の非等方性に依存して、大きく変化することが示された。特に注目すべき結果は、固着領域のサイズが小、および、大であるとき、その近傍の応力、および、その勾配が非常に大きい値を示すのに対して、固着領域のサイズが中程度である場合、応力は膜全体にわたって比較的に穏やかであることである。このことは、もし、極端に高い応力が治療の不全に関連しているならば、治療に対して最適な固着サイズが存在する可能性があることを示唆している。上記の研究については、1件の国際学会において発表するとともに、学術雑誌への投稿を行いすでに受理されている。
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