炭素の酸化反応に伴うダイオキシン類(PCDD/Fs)生成挙動について実験的検討を行った。具体的には、炭素酸化速度と有機塩素生成速度との関係、金属塩素化合物、窒素化合物、硫黄化合物との共存について考察を行った。得られた知見を以下に示す。 (1)炭素酸化速度、有機塩素生成速度およびPCDD/Fs生成速度への種々の金属塩素化合物の影響を定量化し、塩化銅の重要性および塩化鉄と塩化鉛の特異的性質を明らかにした。 (2)PCDD/Fsおよび有機塩素生成に対するガス中酸素濃度および水蒸気濃度の影響を明らかにした。 (3)気相中HClは金属酸化物の塩素化反応を進行させるため、有機塩素生成に対する触媒能を活性化する可能性があるものの、一方では、炭素酸化反応を抑制する可能性を見出した。 (4)気相中NH_3は有機塩素生成に顕著な影響を及ぼさないが、PCDD/Fsの生成量を減少させる。 (5)固体試料への尿素添加はPCDD/Fsの生成量を低減させる効果がある。特に、PCDD/Fs排出量(排ガスへの排出)が顕著に減少する。 (6)炭素表面上の窒素の存在状態を昇温脱離実験結果から考察を行った。また、排ガス中に存在する窒素および塩素を含む炭化水素類を同定、定量し、PCDD/Fs生成抑制メカニズムを検討した。 (7)SO_2ガスの共存による有機塩素およびPCDD/Fs生成抑制効果を確認した。さらに、熱力学計算を行い、PCDD/Fsの生成が抑制される理由を考察した。 以上の研究成果は、オリジナル論文2件、関連レビュー1件、口頭発表5件(海外1件、国内4件)によって公表された。
|