本年度は本課題での初年度ではあるが、昨年度までの特別研究員奨励費の科学研究費の採択課題からの継続した内容として研究活動を実施した。前半は主に九州大においてSNPを利用した配偶子量解析に取り組んだが、測定機械の制御ソフトの改良や機器の故障などトラブルも重なり、予想以上にサンプルの調整に手間取ったため予定期間内に解析を終えることができなかった。来年度以降引き続き改良して取り組むことを予定している。8月には英国のLeeds大において開催された欧州進化学会で現在までの成果を総合的に紹介した発表を行い、この分野において著名な研究者らと議論を深めることができ、今後の研究の方向付けについてさまざまなアドバイスを得ることができた。この分野の最先端の研究者と直接議論する機会は欧米での国際学会ならではのことである。後半は主に実験的手法を用いて野外集団における出生性比の複数年分の解析を行った。その結果、年によって異なった傾向がえられることが判明した。生息地で環境要因などによる年変動が起きていることが示唆され、野外での複数年に渡る調査の重要性が示された。さらに、3月には数理生物と環境モデリングに関する国際会議に出席して出生性比の生活史モデルを発表し、いくつかの貴重な意見をいただいた。普段接することの少ない数理生物学分野の研究者に研究内容を見て頂くことができ、モデルを改良する上でよい機会となった。この際の参考意見と新たなアイデアを元に現在モデルを改良中で、早急に論文として投稿する予定であり、すでに国際誌の編集長から当該内容での投稿の誘いを頂いている。
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