研究概要 |
これまで収集した温帯・亜熱帯性ミノガ科の材料から、1新属新種について形態学、生態・行動学的知見を含めた系統学の論文を作成し、日本蛾類学会誌TINEAに発表した。 九州を中心に国内の野外調査で得た幼虫は飼育して生態データを収集し、羽化成虫は形態・分子系統解析用の試料とした。新属・新種については、生態データと多数の次世代成虫を得るために累代飼育中である。 Diplodoma属単系統群についてmtDNAのND5領域の塩基配列を決定し、これに基づいて分子系統解析を行った。また形態データ、生態・行動データに基づく最大節約法で系統解析を行った。その結果、伝統的手法による系統関係を最大節約法による解析結果の樹形は類似し、また前者の系統関係を分子系統解析の結果の樹形は一致した。これらの3つの解析結果を比較して属間の系統関係を考察し、本群の進化学的考察を行った。この成果は第22回国際昆虫学会議(Australia, Brisbane ;8月)と第64回日本昆虫学会大会(札幌9月)で発表した。後者では、文科省科研費『北半球の温帯林に隔離分布する食材性・材穿孔性の昆虫類に関する系統生物地理学的研究』の研究集会で材穿孔固着性で紐状ミノを作るヒモミノガ類について生態・行動学的な研究結果を発表した。 11月中・下旬に南米(新熱帯区)の亜熱帯性ミノガ科の資料収集の為に、アルゼンチンで生息状況・蛹化・羽化状況等の野外調査を行った。すでに成虫が羽化した空ミノや幼虫の死亡したミノ等は回収して標本とし、羽化成虫は形態学・分子系統会解析用の試料にした。 現在は日本産を中心に温帯・亜熱帯性ミノガについて形態形質の検討や生態・行動を纏め、分子系統解析の結果を加えて系統進化学的な考察を行い、逐次論文に書きあげる作業中である。これらの研究成果は、国内外の学会大会に発表すると共に、国際誌等に発表する予定である。
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