研究概要 |
口臭の原因物質として注目されているメチルメルカプタンや硫化水素などの揮発性硫化物は、口腔内細菌がメチオニンやシステインといったアミノ酸を基質として分解し、産生することが分かっている。これまでにPorphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatumのメチオニン分解酵素、システイン分解酵素の単離精製に成功した。種々の口腔内細菌のメチルメルカプタン産生能をガスクロマトグラフィーで比較した結果、P.gingivalisに続き歯周病原細菌であるTreponema denticolaがメチルメルカプタンを高産生することが分かった。そこで、既知のP.gingivalis, F.nucleatumのメチオニン分解酵素遺伝子の塩基配列をもとにT.denticolaの塩基配列データベースとホモロジー検索した結果P.gingivalisのメチオニン分解酵素と68%,F.nucleatumのメチオニン分解酵素と56%と相同性の高い1206bp、分子量43.5kDaのORFを得た。T.denticolaの染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、増幅した断片を発現ベクターpGEX6P-1(GSTfusion)にサブクローニングした。結果、得られたプラスミドを保持する大腸菌はメチオニン分解活性をもつようになり、このORFがメチオニン分解酵素であることを確認した。T.denticolaのメチオニン分解酵素の性質として、P.gingivalisのメチオニン分解酵素とKm値を比較した結果、メチオニンに対する親和性はP.gingivalisより極めて高いことが分かった。 さらに、口腔内細菌はバイオフィルムを形成して口腔内に存在するため、揮発性硫化物を多く産生する菌同士の相互作用や、バイオフィルム内での性質の変化を二次元電気泳動により解析を行う予定である。そのために、P.gingivalis, F.nucleatum, T.denticola, Actinobacillus actinomycetemcomitansなどの口腔内細菌の二次元電気泳動法を確立した。
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