研究概要 |
研究計画に従って,磁場閉じ込め配位中で生じる不安定性の性質を調べるため,平成15年7月程度まで,まずジャイロ運動論に基づいて,磁場揺動を無視した静電モード(静電ドリフト波)の線形安定性解析のための固有値コードを作成した.その後核融合科学研究所のLarge Helical Device(LHD)及び軸対称トカマク配位などを汎用MHD平衡コード(VMECコード)によって得られる数値MHD平衡解によってモデル化し,それらの配位に対してその線形安定性を調べたものを,学会発表(2)における(i)-(iv)で発表している.その後平成16年1月まで,静電コードの運用に加え,磁場揺動を含めるようにコードを拡張した.これによって,上記LHD装置をモデルとしたMHD平衡に対して電磁モード(運動論的MHDモード)の安定性を調べ,学会発表(2)における(v)-(vi)で発表した.主に得られた結論は以下のとおりである. ・強いイオン温度勾配があるとき,LHDにおいてトカマクと同様にイオン温度勾配(ITG)不安定性が生じ,その不安定化駆動要因はトカマクと大きな差はない.LHDは負磁気シア(dq/dr<0,qは安全係数)をもつ配位であるが,通常安定化として知られている負磁気シア効果はMHD的不安定性に比べて弱く,LHDにおけるITG不安定性は周回粒子・波共鳴が支配的であることを示した. ・一方静電捕捉電子(TEM)モードは,LHDが負磁気シアをもつのにもかかわらず不安定化され,これはヘリカル系に固有のヘリカル磁場リップルに捕捉されたヘリカル捕捉粒子により駆動されていると考えられる.言い換えると,LHDにおけるTEMの駆動要因として,磁気ドリフト共鳴が支配的であることを示した. ・電磁的シアアルベンモードは,MHD方程式に基づいて調べられる圧力駆動型不安定性と相関をもつべきブランチであり運動論的バルーニングモードと呼ばれる.ここでの解析によって,まずジャイロ運動論に基づく不安定性が十分にMHDモードと相関があることを,不安定領域を比較することによって確認した.またMHDモードが十分不安定であるような領域においては,ジャイロ運動論的電磁モードの線形成長率はMHDモードのそれよりも小さくなることがわかり,これはイオンラーマー半径効果等の運動論効果を包含することが重要であることを意味している. 現在,上記の成果を踏まえ,学会誌等への投稿のための準備を行っている.
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