研究概要 |
1.異業種交流を通じたイノベーション イノベーションに必要な内部資源を欠くことが多い中小企業にとって、異業種交流、すなわち、「共同技術開発やその前提となる技術情報の入手、技術提携先の探索のための定期的な情報交換会」は、新製品・技術の開発を促進するうえで重要なネットワークとなっている。そこで、本研究では全国の異業種交流グループを対象に行われた質問紙調査の個票をベースに、異業種交流を通じてイノベーションを達成するにはどのような要因が重要かを定量的に分析した。統計分析の結果、以下の点が明らかとなった。第一に、会員がグループ活動にコミットする度合いが高いほど,異業種交流がイノベーション活動に結びつく確率が高い。第二に、新製品開発を成功させるには、大学や公設試などの外部知識へのアクセスが重要である。第三に、グループとしてイノベーションに挑戦することは、その技術的・商業的帰結に関わらず、会員の製品開発能力にプラスの効果を与える。 2.中小企業による産学連携の特性分析 知識ベース社会においては、中小企業が大学の知識を有効に利用することが産業のイノベーションを促進する上で重要である。そこで、本研究では全国の理工系学部を対象に行われた質問紙調査の個票をベースに、中小企業と大学研究者との結びつきにどのような特徴があるかを定量的に分析した。統計分析の結果、以下の点が明らかとなった。第一に、資金や設備などの内部資源が不十分な中小企業が大学研究者と結びつくには、学会などのインフォーマルな場ではなく、リエゾンオフィスなどの公的機関の仲介が重要な役割を果たす。第二に、中小企業は技術指導を通じて、大学の知識を即時的な問題解決に利用している。第三に、中小企業と大学研究者との結びつきは、大企業のそれと比較して、地理的にローカライズされている。
|