研究概要 |
商業的重要種を多く含むイセエビ・セミエビ類は,浮遊期のフィロゾーマ幼生,浮遊期から着底期への移行期であるプエルルス・ニスト幼生を経て,稚エビとして沿岸域の親個体群に加入する.フィロゾーマ幼生の期間は長いものでは2年にもおよぶが,この幼生期の長さからフィロゾーマ幼生は長距離分散適応型幼生と呼ばれている,本邦に生息するイセエビ・セミエビ類のなかでも,イセエビは最も重要な魚獲対象種である.一連の本研究の最終目標は,1)本邦および台湾北岸に生息するイセエビの親個体群構造を集団遺伝学的方法をもとに把握し,2)今後の資源管理方策に関して新たな提案をすることである. 本年度の研究によって,1.現在までに知見が乏しかった西部北太平洋海域のフィロゾーマ幼生の分布と種組成および輸送・分散経路を明らかにすることに成功した.また本邦および台湾に生息するイセエビの遺伝的構造を解明するための予備実験として,イセエビのmtDNAのCO1領域の塩基配列を決定し,それらと現在までに得られている塩基配列情報との比較を行った.その結果,2.CO1領域はイセエビの集団構造の解明に使用できうることを明らかにし,本邦沿岸および台湾で行うサンプリングデザインを作成した.なお,イセエビ標本のサンプリングは来年の秋季に行う予定である.これら2項目が本年度の主な成果である. なお1に関して,本年度オーストラリア(タスマニア)で行われた国際会議でその成果を発表した.
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