研究概要 |
目的 ジュゴンは草食性で、盲腸内で繊維を消化する後腸発酵動物である。そのため、盲腸内での細菌群について明らかにすることはジュゴンの消化戦略を明らかにする上で重要である。しかし、盲腸内容物中の菌叢は糞中の菌叢とは異なることから、草食動物のモデルとしてモルモットを用いて盲腸内の菌叢を部位別に解析に行った。 方法 4週齢モルモット(日本SLC)2頭を市販のペレット(CE-2,CLEA)で1週間予備飼育後、ジエチルエーテルで屠殺して内容物ごと大腸を取り出して、液体窒素で凍結した。凍結後、メスと鉄製の直径3mmパイプ(打抜きポンチ)を用いて盲腸から4ヶ所と近位結腸から2ヶ所内容物を採集した。すなわち0二つに分け主管腔と溝とした。採集した内容物はQIAamp DNA Stool mini kit (Qiagen)を用いてDNAを抽出し、16SリボソームRNA遺伝子の一部をGC357fと517rを用いてPCRにより増殖した。これを、DGGE (Denaturing gradient gel electrophoresis)(アクリルアミド濃度を6-12%、変性剤を40-60%)に供し、泳動後、ゲル中のバンドからDNAを出し、塩基配列を決め既存のデータベースとの比較により細菌種を推定した。 結果 DGGEの結果、盲腸体と近位結腸に直径方向の細菌群の違いが認められた。盲腸体においては他の盲腸内容物と細菌群が異なる部位が一ヶ所存在し、Ruminococcus albusやTreponema sp.と推定されるDNAを検出した。なお、この部位の細菌群は近位結腸の溝と類似しており、距離においても溝と比較的近くにある。溝の内容物が盲腸に輸送されることを考えると、溝から盲腸に到達した内容物は他の部位と容易に攪拌せずに盲腸内に存在し、異なる発酵様式を持っている可能性が推察される。
|