アグリソームは、小胞体近傍で凝集したミスフォールディングタンパクがダイニン依存性の逆行輸送により微小管上を通り、核近傍の微小管形成中心に集積した結果、形成される凝集体構造である(特に、微小管に依存したタンパク凝集体をこう呼ぶ)。近年では、そのような異常タンパク凝集・蓄積と神経変性疾患の発症との関連が注目を集めているが、その形成における分子機構には未だ不明な点が多い。 そこで、本研究では、アグリソーム形成機構の鍵となる分子の探索、および同定を行うとともに、アグリソーム形成過程の分子機構を、同定した分子の可視化とセミインタクト細胞・再構成分析系を組み合わせて総合的に理解することを目的とする。本年度は、すでにプロテアソーム阻害剤存在下でアグリソーム形成することが確認されているABCA1タンパク質変異体のクラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質発現培養細胞を用いて、アグリソーム形成に関与する分子の検索をおこなった。アグリソーム形成・非形成条件下の上記培養細胞を用いて、GFP抗体による免疫沈降をおこない、得られた免疫沈降複合体を二次元電気泳動で展開した結果、アグリソーム形成条件下でのみ存在するタンパク質スポットをいくつか確認した。現在、これらのタンパク質スポットをアミノ酸マイクロシーケンスで分析するための準備を進めている。また、予備的な実験結果ではあるが、ABCA1タンパク質変異体が形成するアグリソームの蛍光顕微鏡による観察では、すでに報告されている嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)変異体が形成するアグリソームと同様の形態、および微小管に依存した形成を示すにも関わらず、アグリソーム形成条件下での1% Triton X-100に対する可溶性など、いくつかの生化学的解析においてABCA1タンパク質変異体は、CFTR変異体と異なる挙動を示す結果が得られている。
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