研究概要 |
本年度は,遷移金属(M)-ケイ素(Si)複合クラスター:Si_nMを研究対象とし,このクラスターの効率的な生成について検討した。また,負イオン光電子分光法を用いてクラスターの電子状態を観測した。 対象とするSi_nMクラスターを効率よく生成させるために,クラスターをより冷却することを目的として高圧(100気圧)のキャリアガスを噴出できるパルスバルブを用いてクラスターを生成させた。その結果,従来の10気圧程度の押し圧で得られた生成分布と比較して,サイズが小さいケイ素1成分のクラスターを減少させ,目的とするSi_nM複合クラスターを増加させることができた。 また,このようにして生成させた複合クラスターの光電子スペクトルを測定したところ,従来の押し圧で生成させた場合と比べて,シャープなスペクトルが観測された。このことから,高圧でのクラスター生成によってクラスターの内部エネルギーが低減したことが分かる。 さらに,より高エネルギーでの測定を念頭に置き,クラスター生成の2倍の繰り返し回数でレーザー照射を行い,散乱電子のノイズを打ち消してS/N比を向上させるシステムを構築した。このシステムでYAGレーザーの5倍波(hv=5.82eV)を用いSi_nMの光電子スペクトルを測定したところS/N比が格段に向上し,サイズが小さいところでは断熱電子親和力およびピークの形状が大きく変化する様子が観測されたが,ケイ素原子数が11以上ではそれらがほとんど変化しないことがわかった。 なお,再生増幅フェムト秒レーザーによる希ガス逓倍法で発生させた真空紫外光(133nm)を取り出すための「3倍波分離ステージ」の設計・製作を行い,より高エネルギーでの光電子スペクトルの測定を準備中である。
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