これまでの研究で得られた知見の一部は以下の通り。第一に、近年アジアにおける出稼き労働の特徴に、フィリピン、インドネシア人を中心として家事・介護労働に従事する女性労働者が著しく増加(移住労働の女性化)し、新興工業地域だげで50方人を導入している。外国人家事労働者の導入は受け入れ国(香港、シンガポール、台湾)の政策によっている。欧米諸国において外国人家事労働者の多くが未登録労働者によって占められているのとは対照的である。第二に、労働者の導入が労働政策として行われた点である。これは、国内女性の就業を促すために家事・介護・育児といった再生産労働を途上国女性に外部化させるためであり、高度経済成長期における労働需要の増大と対応している。労働者数の調整に関しては、韓国を除きクウォータを設けておらず、需要にあわせて外国人労働者を受け入れている。このことは、国内労働者とは競合しない点が前提となっているが、不況により失業女性を家事労働者として育成する地域も見られる。第三に、再生産労働の外部化は景気循環とは無関係であるという点である。アジア経済危機以降も高齢化の進展に伴う介護需要が増大していることから労働者は増大し続けている。介護需要の増大に応じて外国人家事労働者はますます重要となっている。第四は育児、介護に従事しているにもかかわらず、福祉政策からの評価が行われていないことである。外国人家事労働者、被介護者をめぐる事件・事故が発生している。これは一つに労働者が労働法の適用から除外されていることが挙げられる。外国人家事労働者は労働政策の一環で導入され、福祉政策から切り離されている点が特徴と指摘できる。
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