研究概要 |
1.イソフラボノイド骨格合成酵素(CYP93C)の反応機構と分子進化 マメ科のCYP93Cは,P450に典型的なヒドロキシル化反応に加え,特異なアリール基転位を触媒し,イソフラボノイド生合成の初発物質2-ヒドロキシイソフラバノンを生成する。この反応機構の解明を目指し,マメ科カンゾウのCYP93C2の推定3次構造上で基質の近傍に存在したアミノ酸残基を改変した。特に,3箇所の変異を組み合わせたS310T-L371V-K375Tは,植物に広く分布するCYP93Bと同じフラボン合成反応(FNS)のみ検出された。従って,これらのアミノ酸残基が反応特異性を規定していることがわかった。さらに,先祖型CYP93はFNSであり,CYP93Bの起源となる一方,反応特異性が変化したCYP93Cが生じた分子進化の過程が推定された[論文1]。 2.CYP93C2の可溶化タンパクの大量調製法の確立 CYP93C2の活性中心構造に基づく反応機構の解明を目指し,X線結晶構造に必要な大量タンパクの調製を試みた。膜結合部位を削除したCYP93C2を導入した大腸菌の培養条件(シャペロンタンパクの共発現,培養温度,誘導時間,培地成分)およびタンパク質抽出方法(超音波処理,可溶化剤処理,超遠心)を検討した結果,40mg/培養Lの発現系が確立された。さらに,カラム精製(陰イオン交換樹脂,ヒスチジンタグ精製レジン)を行った結果,SDS-PAGE解析で単一バンドを示す精製タンパク(収率45%)が得られた。 3.CYP93D1の機能解析 機能未同定のCYP93D-Gは,フラボノイド生合成に関わるCYP93A-Cとのアミノ酸配列の相同性が約40%であり,新しい機能が予想された。そこで,シロイヌナズナのCYP93D1の機能解析を目指し,T-DNAタグラインのスクリーニングとflower dip法による遺伝子導入によって,機能喪失株候補および過剰発現株候補を得た。しかし,野生型と比較し形態および成分に顕著な変化は見られなかった。
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