研究概要 |
平成15年度は、マイクロサテライトマーカーの開発を主に行った。マイクロサテライトマーカーは共優性で情報量が多い上に実験および解析が簡便であることから、集団遺伝学や生態学などにおいて、最も有用なマーカーとなっている。しかし、マーカー開発には多大な時間、労力およびコストがかかることから、近縁種で報告されたマーカーのなかから利用可能なものを選んで使用するケースが増えている。これにより、本マーカーの一つの特徴である多くの遺伝子座を解析に用いることができるという点が活かされていないといえる。また、他樹種で開発されたマーカーは、プライマーサイトに変異を含む可能性が高くなり、データの質の低下を招く原因ともなっていると考えられる。目的とする樹種について,より迅速にマーカー開発が可能となれば、このような問題が減少すると考えられる。よって、マーカー開発の効率化に重点を置き、研究を進めた。 まず、本邦産の重要造林樹種であるアカマツを対象として、既報のエンリッチメント法の細部条件を検討することにより、マーカー開発の効率化を行なった。その結果、短期間に多数のマイクロサテライトマーカーを開発することに成功した。同様に、他のいくつかの樹種についても、マイクロサテライトを含む領域の塩基配列を決定した。このように、迅速に目的樹種のマイクロサテライトマーカーを開発することが可能となった。 作成したプロトコールにより、熱帯産早成樹種であるアカシア・マンギウムのマイクロサテライトマーカーの開発を行ない、6種類の利用可能なマーカーを作成した。以前に行なった採取林の交配実態解明研究では既報のマーカーだけでは情報量が不十分であることが示されていた。今回開発したマーカーを加えることにより、今後、交配実態の詳細な解明が可能になると期待される。 また、他の熱帯産育種対象樹種についてもマイクロサテライトマーカーの開発に着手しており、インドネシアの研究者と共同で育種事業をサポートするための協議を行なっている。
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