研究課題
大気から地球表面に湿性沈着した鉱物粒子(黄砂)の粒度(粒径)分布を測定2004年3月に大規模な黄砂現象が北日本各地で観測された。北海道札幌市の平野部と手稲山頂で降雪とともに沈着した鉱物粒子を集めた。積雪試料中の鉱物粒子の粒径分布と沈着量を測定したところ、手稲山頂と平野部で大きな違いは見い出されなかった。手稲山頂の直上には雪をもたらした積雲の雲底が位置したので、雪が大気境界層内を落下する間に大気中鉱物粒子と衝突して沈着除去した寄与(ウォッシュアウト効果)は少なかった。大気エアロゾル中の鉱物粒子濃度から乾性沈着量を見積もった結果、全沈着量に対する寄与は無視できる程度であった。今回の大規模な黄砂現象で沈着した鉱物粒子の大部分は、雪雲内で氷晶核として働いたものか雲粒と衝突したものである。大気エアロゾル中鉱物粒子の粒径分布は3〜4μmに濃度ピークを示したのに対して、湿性沈着した鉱物粒子の粒径分布の濃度ピークは7〜10μmに位置した。これまで、雨によって湿性沈着した鉱物粒子の粒径分布は大気中鉱物粒子の粒径分布と一致すると考えられていたが、実際にはより大きな粒子が沈着していることが明らかになった。これは、春季、黄砂を運んでくる低気圧の上空では氷晶核によって雲が形成されていることが影響している可能性がある。西部北太平洋で観測される黄砂粒子の粒径分布から乾性沈着粒子の粒径分布を見積もると、7〜10μmに濃度ピークを示す。黄砂の影響を受け易い西部北太平洋では、乾性・湿性の両沈着によって7〜10μmの鉱物粒子が海洋に沈着していることが示唆された。今後、このような粒径特性を持つ鉱物粒子が海洋表面にどれだけ滞留し、その滞留時間内に海洋へどれだけ微量金属が溶け出すのかを明らかにするのか調べる必要がある。
すべて 2005
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Journal of Geophysical Research-Atmospheres 110
ページ: D03201 10.1029/2004JD