研究概要 |
もともとは極東アジア原産であるが、最近世界的に移入種として問題になっているワカメについて世界各地9ヶ国(日本、韓国、中国、フランス、USA、メキシコ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン)のサンプルについて、ミトコンドリアゲノム上の二つの領域をマーカーとして遺伝的多様性の解析をおこない、その結果に基づきそれぞれの移入集団の原産地の推定を行った。本研究では日本と中国・韓国の自然集団を遺伝的に区別することに成功している。ヨーロッパ沿岸とメキシコ太平洋沿岸に見られる移入集団は日本の東北太平洋沿岸・北海道沿岸の自然集団と,またオーストラリア・タスマニア島の集団は日本の本州日本海沿岸・瀬戸内海沿岸に分布している集団と同じ配列(ハプロタイプ)を持っていることが分かった。また直接同じ配列は見つかっていないものの、USA太平洋岸の集団のハプロタイプは関東周辺の集団に似ており、この地域に起源している可能性が示唆された。NZには日本と中国・韓国の両方から移入が起きている可能性が高いこともわかった。オーストラリア・メルボルンとアルゼンチンの移入集団は中国・韓国の集団とハプロタイプが同じであったが、移入の成立年代が新しく、温帯域のワカメは赤道を越えることは困難であろうことを考えると、NZからの二次的移入の可能性も考えられるという結果を得ている。これらの結果を国際学会を含む、3つの学会で発表した。 ワカメと同様の手法で東シナ海に春期に現れるアカモクの流れ藻について、中国、韓国、日本の集団と比較を行い、その起源地を推定した。これまでの解析で、今まで中国起源であると言われていた流れ藻アカモクが、遺伝的には中国よりは日本の九州西岸の集団に近いことがわかっている。これらの結果についてはシンポジウムを含む2つの学会で発表した。
|