アカモク・シダモク種群における集団間の遺伝的多様性について、これまで用いてたミコトンドリアゲノム由来のマーカーに加え、核ゲノム由来のマーカーをSSCP法を用いた解析により導入し、これまで別種とされてきたアカモクとシダモクの間に雑種とみられる個体が存在することを確認した。またミトコンドリアマーカーによる解析についてもnested clade analysisという統計的手法を用い、より詳細に日本沿岸のアカモク・シダモク種群の系統地理について解析をおこない、最終氷期以降本種群が日本沿岸において気候変動の経影響を強く受けて集団サイズの変動を繰り返してきたことをあきらかにした。 また日本沿岸において様々な魚種の稚魚の生育場所として水産的重要性が認識されている流れ藻がどこから流れてくるか、といり問題について、アカモク集団間の遺伝的変異の地埋的分布を利用した推定を試み、東シナ海のアカモク流れ藻集団、日本沿岸のアカモク固着集団、中国上海沖の流れ藻の起源地といわれている乗四諸島の固着集団を比較した。その結果従来言われてきた説とは異なり、乗四諸島は東シナ海の流れ藻の起源地としては考えにくいことが明らかになった。また九州沿岸や高知沖で採集されたアカモク流れ藻集団同士をくらべ、従来いわれてきたように沿岸域と沖合の流れ藻では地埋的起源が異なること、また同じ海域でも一か月の差で流れ藻の遺伝的組成が大きく異なることを明らかにした。 ワカメ属の種間雑種の解析では、ワカメ、アオワカメ、ヒロメの3種についてマイクロサテライトによる解析を導入し、ワカメについて開発されたマイクロサテライト遺伝子座のいくつかについてヒロメ、アオワカメでも利用可能のであることを確かめた。
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