研究概要 |
本研究代表者はロジウム錯体と 4,6-ジエナールとのヒドロアシル化反応を検討し7員環化合物が収率よく生成することを見出し報告している。また、本反応において基質のジエン部分の幾何異性及びジエン末端の置換基の有無が反応経路に大きく影響を与えることを明らかにした。さらに、本反応を検討中にロジウム錯体とジエン-オレフィンとの間で進行する新規環化異性化反応も見出した。そこで本年度は、これら2つの新規環化反応を利用し一工程で二環式化合物を合成することを計画した。反応に先立ち効率的な基質の合成法を確立すべくパラジウム錯体によるブテニリデンマロネートの脱共役を伴う位置及び立体選択的アリル化反応の検討を行うことにした。まずはじめにブテニリデンマロネートをジメチルホルムアミド中、NaHで処理し、パラジウム錯体存在下、配位子としてトリフェニルホスフィンを用い、室温にて2当量のアリルアセテートと反応させた。その結果、エステルのα位選択的にアリル化反応が進行し目的とするトリエン体が63%の収率で得られた。また、この際得られたトリエン体の1,3-ジエン部分の幾何配置はE配置の単一生成物であり、ここに本研究代表者はパラジウム錯体によるブテニリデンマロネートの脱共役を伴う位置及び立体選択的アリル化反応の開発に成功した。さらに、反応条件の検討を行ったところ、塩基としてLHMDS を用いることでトリエン体の収率が90%と飛躍的に向上することがわかった。また、本反応は種々の官能基を有するアリルアセテート誘導体を基質として用いても位置及び立体選択的にアリル化反応が進行し望みとするトリエン体を収率良く与えた。本反応で得られる生成物は4級炭素に直接1,3-ジエン構造が結合したユニークな化合物であり、有機合成化学的に有用な合成シントンとなるものと期待される。
|