最近話題となっているフォトニック結晶(Photonic Crystal : PC)を用いた光波回路は、光の波長と同程度の大きさの急峻な曲げを内蔵できるため、超小型化が可能であり、PC光波回路の多機能化、高性能化に関する研究が世界的に行われている。特に、光カー効果を用いた非線形PC光波回路は超高速、超小型全光学信号処理デバイスとなり得る可能性を秘めており、筆者らもこれまで、非線形PC光波回路の解析法や、いくつかの具体的なデバイスを提案してきた。今年度の研究では、これまで開発してきた手法を駆使して、非線形PCを用いた新たな全光学信号処理デバイスとして、マッハ・ツェンダー干渉計、及び光双安定スイッチング素子を提案した。これらはいずれも既存のものよりもサイズが小さく、スイッチングパワーも同程度といった利点をもっている。さらに、非線形デバイスはもちろんのこと、様々な応用に有用であるPC導波路型グレーティングを提案し、併せてその特性を簡便に評価可能な手法を開発した。これらの研究成果については海外、国内の権威ある学術誌にて公表、また採録が決定している。 さらに、最近超小型光導波路の一候補として提案された、スロット導波路のもつ非線形デバイス応用への有用性にいち早く着目し、その特異な性質を生かして、微小光導波路において問題となる偏波依存性を解消した、偏波無依存光方向性結合器、それを用いた非線形全光学論理演算素子、そして偏波無依存マルチモード干渉光導波路の提案を行った。これらの研究成果に関しては、海外の権威ある学術誌にて公表、採録決定、そして投稿中である。
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