研究概要 |
破壊の力学にもとづいた断層運動の表現は,地表地震断層と伏在断層の違いや,逆断層の性質,断層の幾何形状が破壊伝播に与える影響を見積もるうえで重要であり,有効な地下構造モデルを組み込んだ波形計算を行うことによって,地震動の解釈がより深まることが期待される.平成15年度は申請課題を遂行するために必要な基礎研究として,動力学的震源モデルを用いた強震動予測手法を完成させ,建築構造物のだめの入力地震動を計算し,その適用可能性を検証した. (1)動的震源モデルによりシミュレートされた断層破壊を,運動学的な手法を用いて再表現する手法の確立 動力学的な震源モデル(応力ベース)の特徴を生かした運動学的な震源モデル(すべり量ベース)の記述方法として「擬似動的震源モデル」が提案されている.擬似動的震源モデリングとは,動的震源計算で確認された理論式と経験式をもとに,最終すべり量・静的応力降下量・破壊エネルギー・破壊開始時刻・最大すべり速度・ライズタイム・強震動パルス幅といった断層破壊にかかわる一連のパラメータを,摩擦構成則にしたがう断層破壊の計算を行うことなく導出する方法である.M7クラスのシナリオ地震に対して擬似震源モデルを構築し,地震動計算を行った結果,動的震源モデルを入力とした場合と似通った波形・応答スペクトルが得られることを確認した.これは地震動再現において,擬似動的震源モデリングが動力学的な震源モデルと同等のポテンシャルを持つ手法であることを意味している. (2)震源近傍強震動のシミュレーションとその妥当性およびはらつきの検討 動的および擬似動的震源モデリングの特色として,破壊の伝播過程を司る動的パラメータ「破壊エネルギー」が再現されるため,震源ごく近傍では,時に大振幅をもった鋭いパルス波が試算され,従来の運動学的震源モデルから想定される経験式を上回る偏差がみられることがわかった.
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