今年度は選挙の年であったため、選挙調査を通じてアイデンティティの政治の解明に努めた。まず、平成16年1月5日から5月27日にかけて、インド国ビハール州において下院議員選挙に関する調査を行なった。調査地は、90年に公務員職留保制度をめぐって上位カーストと後進カーストの対立が暴力化したことで知られている。本調査においては暴動をめぐる政治過程、その後の政治変動について、政治家から村人に至るまで幅広く聞き取り調査を行なった。本出張自体は私費での出張だったが、帰国後研究成果を取りまとめる作業に従事した。 この出張に続き、平成16年7月20日から9月30日までインド国ビハール州において科研費による出張を行った。本研究においては「アイデンティティの政治」の中でもカースト・アイデンティティと宗教アイデンティティに焦点を絞っているが、調査地は宗教アイデンティティが政治化したことで知られる。89年に起こった暴動は、史上最悪と呼ばれた規模から、ビハール州、ひいてはインドで90年代に起こった政治変動の引鉄を引いた暴動ともいえ、暴動をめぐる政治過程について調査を行なった。帰国後は成果の取りまとめに専念した。 平成17年1月5日から3月17日までの予定で、再びインド国ビハール州において私費による調査を行っている。2月に州議会選挙が行なわれるためであるが、下院選挙からわずか9ヵ月後に行なわれる選挙であるため、下院選挙と州議会選挙の違いを通じてアイデンティティの政治の展開について解明したい。 今年は海外出張が多かったため、成果を公表するには至らなかったが、来年度にはきちんと形にすることとしたい。(了)
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