今年度は、国外における史料収集に重点をおく研究計画を実施した。 夏季はフランス共和国、イタリア共和国、スペイン、ポルトガル共和国において、前近代日本関係史料予備調査と図書館・文書館情報の収集を、冬季はオーストリア共和国、イタリア共和国、ポルトガル共和国において史料調査を行った。 このうちイタリア共和国は、当該研究領域中おいて情報収集が遅れている地域であり、また東京大学文学部がフィレンツェに教育研究センターを所有しているため、重点的に調査を行った。その結果数十件の日本未紹介史料はもとより、現地研究者の論文にも未収のフランチェスコ・ディ・メディチ宛て伊東マンショ感謝状など、予想を上回る成果を挙げ、同地における調査継続の必要性が確認された。なお調査に際しては平成9-11年度科学研究費補助金「在欧日本史料の所在と現状に関する調査」(研究代表者 高木俊輔)からも有益な情報を得ることができた点を付記する。 フランス共和国・オーストリア共和国については、現段階において関係情報が非常に限られものであるため、史料所蔵機関の所在確認や図書館目録の購入などの予備調査に留った。スペインはイタリア共和国・ポルトガル共和国に重点をおく日程上、予備調査に留めざるを得なかった。 ポルトガル共和国では、本研究計画開始以前から行っている調査を補う形で、リスボンをはじめ、エヴォラ、コインブラ、ポルトにおいて史料収集や書籍購入を行った。 このほか国内において、天龍寺妙智院の所蔵史料調査を行った。その詳細は11研究発表の項を参照。16世紀の日明関係を考察する上で不可欠な史料である『策彦和尚初渡集』を含む、同院所蔵史料の全貌は、これまでの幾多の関連研究にもかかわらず明らかではなかった。今回、原蔵者である天龍寺妙智院、ならびに寄託先である京都国立博物館の協力を得て、2度にわたる調査を実施し、成果の一部を公表するに至った。
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