前年度における海外史料調査の成果を前提に、今年度は収集した史料の整理を中心とした研究を行った。リスボン国立図書館・ローマイエズス会文書館ほかが刊行しているアジア関係のイエズス会士・ポルトガルのインド政府を中心に作成された書簡類は、現時点でデータベース化が終了しているもので約7700件に達している。最終的には9000件を超える見通しである。これらのうち、日本に直接関連する記載を含むものは、4〜5分の1程度であるとみられるが、現在訳出されている数が500余であることと比較するならば、その数は軽視できるものではない。したがって、これらの整理に加えて、未公刊史料の選別・位置づけを行うことが、前年度海外史料調査を成果として公表する前提作業として必要であると認識するに至り、当初の計画を変更し、上記作業を重点的に行った。 今年度は口頭発表を除いては成果の公表には至らなかったものの、現在学位論文の一部として、2本の論文を投稿準備中である。年刊である雑誌の投稿規程の都合により、3月時点では投稿するには至っていないものの、スペイン史研究、イタリア学会誌にそれぞれ「日欧通交の黎明」、「フィレンツェ国立文書館所蔵史料にみる大航海時代点描」の投稿を申請し、申請を受理されている。 このほかより長期的に、調査対象を広げるべく、これまでヨーロッパ経由の情報に依存していた、インド・ゴア州パナジ市所在の図書館・文書館・博物館事務所(旧称:ゴア歴史文書館。現英語名:Directorate of Archives & Arcaeology & Museum)における所在確認ほかの予備調査、小規模の所蔵史料調査を行った。上記のデータベース化作業に加え、将来における南欧での調査に備え、奨励費により購入したドキャメントスキャナを用い、関係書籍のデジタル化を断続的に行っている。
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