アメーボイド・オリビン・アグリゲイツ(以下AOA)とは、主に細粒のカンラン石と、難揮発性包有物(refractory inclusions)からなる不定形の集合体である。始原的なAOAの主要構成物はMgかんらん石より高温で凝縮する鉱物だと考えられていたが、近年、共同研究者らにより、low-Ca輝石が存在することが明らかになった。Low-Ca輝石は、これまでAOAの他の構成鉱物よりも低温で凝縮する鉱物であり、コンドリュールの主要構成鉱物でもある。申請者が詳細な鉱物学的研究及びElectron Back-scattered Diffraction Measurement(EBSD)による分析を行った結果、AOAに含まれるlow-Ca輝石は、10μ以下の細粒であり、AOA内の他の鉱物と同様、凝縮で形成された可能性が高いことが明らかになった。また、コンドリュールに含まれるlow-Ca輝石と類似した組成を持つが、粒子サイズ・形状が異なり、成因は異なることが示唆された。 さらに、これまでほとんど研究されることの無かったY-86009CVコンドライト隕石の鉱物学的研究を行った。これまで、CVコンドライトは、酸化的Allendeタイプ、酸化的Baliタイプ、還元的タイプの3種類あると考えられていたが、申請者の研究によりY-86009隕石はその中間的存在であることを明らかになった。このことは、3種類がそれぞれ関連しており、各タイプは一つの母天体上で分化されたことを示唆している。現在はその証明に向けてさらなる研究を行っているところである。
|