研究概要 |
変位速度の小さな短い活断層については,トレンチ調査法の適用が困難な場合が少なくない.筆者は,昨年度までに,こうした活断層にも適用可能な古地震調査手法である「山地斜面におけるピット調査」の試行調査を行ってきた.本年度前半では,それらの調査についての追加分析・結果のとりまとめを行い,夏に米国で行われた国際第四紀学連合(INQUA)第16回学術大会にて,本調査法の有効性と問題点についての発表を行った.また,学会発表後,1954年Rainbow Mountain地震,Fairview Peak地震,Dixie Valley地震の際に活動した活断層およびその周辺の活断層(B〜C級活断層)について,地形・地質学的現地調査を実施した.この際得られたデータは,今後日本の事例について実施する調査の結果と比較・検討する予定である. 年度後半では,まず,地形学的検知限界を上回る活断層および下回る活断層のいくつかの国内事例について予察的現地調査を実施した.それらの結果から,1891年濃尾地震を引き起こした活断層群およびその周辺の活断層群についてのより一層の理解が,活断層の検知問題・グルーピング問題の解決にとって特に重要であると判断した.そのため,本年度後半では,濃尾地震の主要起震断層である根尾谷断層についての詳細な空中写真判読および現地調査を実施し,その北半部についての基礎的な地形・地質データの取得(詳細な地形区分図の作成,段丘堆積物の記載,変位地形の詳細位置・変形形態の記載,地形測量による変位量の測定)を概ね完了した.その結果得られつつある新知見としては,(1)一般に単純なトレースをもつ根尾谷断層であるが,揖斐川-武儀川断層と交差する付近においては複雑な分岐や変形形態が認められること,(2)古地震調査(トレンチ調査,山地斜面におけるピット調査)のための良好なサイトを発見したこと,などが挙げられる.
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