東シナ海対馬沖でアーカイバルタグ(標識型小型記録計)を腹部に装着して放流しその後1995年から2001年に再捕に成功した約40個体のクロマグロから得られた遊泳水深、環境水温、体温などの時系列データについて解析を行った。その結果、体サイズの大きい個体ほど体温と水温との差が大きくなる傾向にあったが、温度差の増大する割合は成長に伴い小さくなり、平均体温は30度を越えることはなかった。熱収支モデルより成長に伴い体の断熱性が増大するものの、その一方で発熱速度は減少することが示され、その結果、体温は致死温度には至らず、それが成長しても温帯域で活動を可能にし、ひいては魚類の中で最大級にまで成長させる要因のひとつとなっていることが明らかになった。以上の結果について、10月に韓国ソウルで開催された第12回PICES(North Pacific Marine Science Organization) meetingで口頭発表を行った。 また、東部太平洋において、現場海域の鉛直構造や餌分布様式ならびにバイオマスと本種の遊泳行動との関係や生息環境が本種の体温生理に与える影響を調べるため、平成15年7月10日から9月10日、平成16年1月30日から3月31日までアメリカ、スタンフォード大学・ホプキンス臨海実験所、バーバラ・ブロック博士の研究室に滞在し、サンディエゴ沖にてクロマグロのアーカイバルタグ取り付け・放流実験を行った。また、逐次再捕され回収に成功した遊泳水深、環境水温、体温などの時系列データの解析も行い、西部太平洋のクロマグロの鉛直遊泳行動との比較を行った。
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