研究概要 |
本年度は、交換媒介(medium of exchange)としての貨幣を含んだランダム・マッチングモデルのなかでも、貨幣および取引される財の分割可能性を導入した(すなわち、貨幣および財を1単位だけではなく何単位も持つことができる)経済において、取引時にRubinstein流の標準的なbargaining procedureによって交換される貨幣および財の量を決定するモデルの研究をおこなった。 従来の貨幣を含んだマッチングモデルにおいては、時間と確率を含んでいるというモデルの複雑さから、均衡を決定する方程式体系を直接解くことはできなかったが、Kamiya and Shimizu, "Real Indeterminacy of Stationary Equilibria in Matching Models with Media of Exchange," CIRJE Discussion Paper F-167,University of Tokyo(2002)において示された、貨幣を含んだマッチングモデルにgenericな定常均衡の連続性を利用して、比較的単純な構造を持つ均衡に注目し、当該交渉問題を非線形相補性問題(nonlinear complementarity problem)へと帰着させることによって、解の存在を証明し、同時に本モデルにおいても定常均衡の連続性・非決定性を証明することに成功した。これらの結果は現在論文にまとめている最中であるが、一部を同じく今年度得られた東京大学の神谷和也教授とオランダTilburg大学のDolf Talman教授の研究成果に負っているため、本論文は神谷教授との共著として来年度に海外学術雑誌に投稿することになると思われる。 本年度に引き続いておこなうべき研究課題としては、主として数値計算を使用して均衡の大域的な構造を調べること、および連続的に存在する定常均衡の中でより厚生が高くなるものを発見し、その均衡を実現するためのmonetary policyを調べることなどがあり、来年度に取り組む予定である。
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