単一光子発生器や面発光レーザといった窒化物半導体面発光デバイスの早期実現に向けた基盤技術の確立をはかった。本年度の具体的な成果は下記の通りである。 1.AlGaN/Gan DBR上へのInGaN量子ドットの自己形成 GaN単層膜とAlGaN/GaN DBR上へ同時にInGaN量子ドットを成長し、その形成条件を確認した。窒化物半導体の結晶成長は有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて行った。InGaN量子ドットの作製は700℃近辺で行ない、温度など種々の成長条件に対する形状・密度・PL発光特性などの依存性を調べた。原子間力顕微鏡による観察の結果、ある条件においては平均直径15nm、平均高さ4nmのInGaN量子ドットが、8×109cm-2の密度でAlGaN/GaN DBR上に形成されることがわかった。 2.InGaN量子ドット微小共振器LEDの作製 InGaN量子ドットを活性層に組み込んだ微小共振器LED構造を作製した。as-grownの状態において、光学測定(反射・PL)を行った。反射スペクトルには、下地DBRの反射スペクトルを反映して共振器モード波長のシフトが明瞭に観測された。また、同じ試料のPLスペクトルには共振器モードに対応した波長に発光ピークがあり、その位置依存性も反射測定の結果とよく一致していることが分かった。さらに、このPL発光の半値幅は70meV程度と見積もられたが、この値は特別な共振器構造を有さない(GaN単層膜上の)InGaN量子ドットリファレンス試料におけるPL発光半値幅(300meV以上)に比べるとかなり狭くなっている。これらの結果は共振器モードへの、InGaN量子ドットからの自然放出光の結合が起こっていることを明瞭に示している。
|