本研究では、まず、操作者の動作を拘束することなく運動情報を所得し、正確に力提示をする機構を有するマスタアームを開発した。このマスタアームには外骨格型機構を取り入れ、無理なく必要最小限の駆動で操作者に追従することを可能にした。また6自由度アームに加速度センサからなる肘用の姿勢センサを追加する構造にすることで、操作者の肘を拘束しない7自由度姿勢計測・6自由度力提示システムを実現し、操作者のスムーズな動作を可能とした。さらに力やモーメントの提示を簡便にするためにアーム先端を3軸直交構造とし、アームにかかる重力を補償するワイヤ吊り下げ型にすることで、十分に力提示を行える機構とした。 次に、このマスタアームで制御されるスレーブアームとして、人と同じ大きさと自由度配置を持つ7自由度アームを製作し、マスタアームとの間でバイラテラルのインピーダンス制御を行った。スレーブアームの有する冗長自由度の問題については、肘の姿勢センサの情報と、スレーブアームにおける肩のYaw軸の関節角度を1対1対応させ、その1自由度についてのみPD制御をすることにした。この場合ヤコビアンは6×6行列と正則になるためその逆行列が計算できるようになり、かつ操作者の1自由度分の運動情報を加えることができた。 このシステムにより、操作者の腕全体の動きに正確にスレーブアームが追従できているか確認する実験を行ったところ、充分な精度で追従できており、スレーブアームの先端が物に触れたときの力もマスタ側で正確に再現できていることが確かめられた。これにより、今回開発したマスタスレーブシステムが、遠隔臨場制御を実現するために充分な性能を持っていることが確認できた。 さらに、段差乗り越えのために、全方向車輪の傾きを段差に対応させて変化させる新型の空気圧駆動機構を有した全方向移動車を東工大の広瀬研究室と共同で作製し、それが充分な段差乗り越え能力と走行能力を持っていることを実験で確かめた。
|