研究概要 |
本年度は顕微光電子分光を行う前段階として従来型光電子分光法を用いた研究を行った。対象として新規超伝導体であるMgB_2とその関連物質のZrB_2、Ca(Al_<0.5>Si_<0.5>)_2(以後CaAlSiと表記)を選んだ。MgB_2は約40Kという高い超伝導転移温度を持ち、その転移機構を解明することが急務である。MgB_2は2つの異なる大きさの超伝導ギャップを持つという点が最も特徴的な性質の1つである。このことを直接明らかにするために角度分解光電子分光を用いて超伝導ギャップの研究を行った。その結果、2種類の異なる対称性を持つフェルミ面上で異なる大きさの超伝導ギャップが開いていることが明らかになった。この成果を"Definitive Experimental Evidence for Two-Band Superconductivity in MgB_2" Physical Review Letters 91,1127001として発表した。この研究では300x300x50μm^3程度という小さな試料を用いた。高分解能測定を行うためにはこの程度の大きさが下限であり、今後さらに顕微機構の改良を進める必要があることがわかった。 次に対称性の違いと超伝導ギャップの大きさの関係を調べるために、MgB_2と同じ結晶構造を持つCaAlSiについて角度分解光電子分光を用いて超伝導ギャップの研究を行った。その結果、CaAlSiは2つの等しい対称性を持つフェルミ面を持つことがわかった。それらのフェルミ面でそれぞれ同じ大きさのギャップが開いていることがわかった。この成果は"Identical superconducting gap on different Fermi surface of Ca(Al_<0.5>Si_<0.5>)_2 with AlB_2 structure"としてPhysical Review B誌に掲載が決定している。
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