本年度は電子線リソグラフィーで作製した高分子鋳型と高濃度ゾルゲル法を用いて、可視領域で透明かつ高屈折率をもつ酸化物材料である酸化チタンおよびチタン酸バリウムの二次元フォトニック結晶の作製法を提案して、作製したフォトニック結晶の基本的な光学特性を調べることを目的とした。 まず可視領域にフォトニックバンドギャップを持つ構造を計算により決定して、この結晶から電子線リソグラフィーにより高分子鋳型を基板上に形成した。この微細な鋳型を隙間なく充填し、かつ乾燥時に亀裂の発生しないゾル溶液の条件を調査した。次に鋳型の表面に形成されるゲル膜の除去法を検討した。鋳型を除去後、焼成して酸化物の柱からなる微細周期構造を得た。得られた周期構造体のフォトニック結晶としての光学特性を反射および透過光測定により評価した。 この結果、周期350-500nm、直径約250nmの円孔が二次元三角格子上に配列した厚さ1200nmの高分子鋳型をSi単結晶基板、MgO基板、メソポーラスシリカ上に形成した。ポリエチレングリコール(分子量400)を適量添加した金属アルコキシドを出発材料とする高濃度なゾル溶液は微細な鋳型を隙間なく充填し、乾燥後に亀裂が発生しないことがわかった。また鋳型の表面に形成されるゲル膜をフッ化炭素ガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去できた。鋳型を溶解してゲルの柱からなる周期構造を得て、この周期構造を723-1173Kで焼成し、最終的にチタニアまたはチタン酸バリウムの柱からなる周期構造を得た。この柱配列のサイズは周期350-500m、高さ500nm、半径約80nmであった。またTEM観察の結果から、柱は酸化物の微結晶で構成されていた。反射測定および透過測定の結果、作製した柱配列はフォトニックバンド構造を持ち、可視領域に計算とほぼ一致するフォトニックバンドギャップ構造を持つことがわかった。
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