本研究の目的は、マラリア原虫にとって必須の色素体「アピコプラスト」について、その機能と制御を担うタンパク質を網羅的に把握し、その中からアピコプラストの未知機能を探索する事である。前年度は、熱帯熱マラリア原虫の全推定タンパク質配列を、数種の真核生物および新たに報告した単細胞原子紅藻のゲノム(松崎他・2004)と比較しカタログ化した。 本年度はまずカタログ中の遺伝子の検討を行った。カタログには植物由来と考えられる遺伝子が計246存在しており、これがアピコプラストの機能と制御を担うと考えられた。ここには紅藻には存在しない遺伝子が42あり、これまでにも指摘された緑藻の関与が改めて示唆された。そこでアピコプラストの機能としてすでに提唱されている代謝系について、その酵素遺伝子の系統解析を行った。その結果ispGおよびfabI遺伝子は明らかに緑色植物に由来し、fabZ遺伝子は紅藻由来と推定されることから、アピコプラスト機能に関与する遺伝子の由来として紅藻と緑藻の療法ともが考えられることが示された。 アピコプラスト内に局在が予測される376の機能未知遺伝子のうち、植物由来と考えられるものは30遺伝子のみだった。これらの多くは配列モチーフなどからアピコプラストの遺伝子発現系への関与が示唆された。一方アピコプラスト局在が予測されない植物由来遺伝子のうち、発現時からアピコプラストへの関与が示唆されるものは68遺伝子あった。この中から類縁寄生虫および藻類において配列が強く保存されていた2遺伝子を解析対象とした。 この対象遺伝子とどの紅藻がホモログについてクローニングをし、大腸菌で発現させたタンパク質を用いて抗体を作製している。この抗体により、局在の確認と免疫沈降による機能推定を行う予定である。
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