研究概要 |
本年度は以下の2つの研究目標を立て研究を行った。 (1)秩序型REBaMn_2O_6(RE=Tb, Dy, Ho, Y)の逐次相転移、特にこれらの物質で初めて見出した軌道整列転移と思われる構造相転移、及び新しい積層構造を持った電荷・軌道整列相の詳細を明らかにする (2)RE/Baサイトのランダムネスがペロブスカイト型Mn酸化物の物性に与える影響 次にこれらの研究目標についての研究実績の概要を示す。研究目標(1)について、詳細な構造解析、電気抵抗の異方性を調べるためにまず単結晶の育成を試みた。単結晶育成にはFZ法を用い、TbBaMn_2O_6の単結晶を得るととに成功した。現在得られているのは最大3mm程度であるが、放射光X線散乱、電気抵抗測定には十分な大きさであるので現在測定を進めている。研究目標(2)にういては特にペロブスカイト型Mn酸化物が示す強磁性転移、A型反強磁性転移、CE型電荷軌道整列転移に焦点をあて、強磁性転移、A型反強磁性転移を示すPrBaMn_2O_6、CE型電荷・軌道整列転移を示すSmBaMn_2O_6についてAサイトの秩序度を様々に変えた物質を合成し結晶構造とその物性を検証した。その結果、全ての相転移はAサイトのランダムネスにより大きく乱され、長距離秩序を形成することが困難になることが明らかとなった。この傾向は強磁性転移に比して電荷・軌道整列転移の方が非常に顕著に現れわずかな乱れの導入により電荷・軌道整列の長距離秩序が容易に破壊されることを明らかにした。この結果の一部はイタリアで開催された国際会議ICM2003で発表した。現在、詳細な結晶構造解析及び、よりミクロな領域を観察するため、電子顕微鏡観察を行っている。
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