研究課題
本年度は、北海道大学大学院鈴木範男教授の研究室で教わり習得した、培養細胞を用いた遺伝子発現系および受容体結合実験系を本研究室で初めて確立した。ウナギでクローン化した2種のグアニリン受容体、グアニル酸シクラーゼC型-1と-2(GC-C1とGC-C2)遺伝子をCOS7細胞で発現させ、すでに同定し合成済みのウナギの3種のグアニリンペプチド(グアニリン、ウログアニリン、レノグアニリン)を結合させ、セカンドメッセンジャーのcGMP産生を調べた。その結果、3種のグアニリン全てが、GC-C1、GC-C2両方に対し、用量依存的なcGMP産生を示した。GC-C1では、現在のところ3種のリガンド間でcGMP産生能に有意な差は見られておらず、追加実験により確認中であり、GC-C2では、cGMP産生能の強さは、グアニリン>レノグアニリン>ウログアニリンの順番であった。哺乳類では、リガンドはグアニリンとウログアニリンの2種、受容体はGC-Cの1種しか知られておらず、cGMP産生の強さはウログアニリン>グアニリンであるが、本研究のウナギGC-C2では逆の結果を示した。ウナギのグアニリン-受容体系が哺乳類よりも複雑な仕組みでできていることが示唆された。また、生体内での直接作用を調べるために、Ussing chamberを用いた電気生理学的研究も始めた。ウナギの腸を単離し、上皮側または基底側からリガンドを投与し、膜内外の電位差の変化を測定することで、作用の有無、作用の強さ、上皮側か基底側どちらに効くかあるいは両方かという情報が得られる。これまでのところ、グアニリン、レノグアニリンは、腸の上皮側から作用し、その強さはレノグアニリン>グアニリンであり、前述のGC-C2受容体の結果とは逆であったため、さらに深い分析が必要となった。
すべて 2004
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Comparative Biochemistry and Physiology Part A 139
ページ: 417-424