研究概要 |
本研究の目的は,人間が言語を用いてコミュニケーションを行う際に前提となる知識や条件を「談話の構造化」(Segmentation)という観点から捉え,対話の成立過程をモデル化する談話モデルを構築することである.談話セグメントの認定に関わる本研究の課題は次の通り. (1)談話セグメントの認識 合図句の使用や韻律情報などの表層の言語情報が談話セグメントの境界やセグメント間の包含関係の同定にどのように貢献するかを明らかにした. (2)言語現象との関わり 談話セグメントが指示表現や照応表現の解釈をいかに制限するかを明らかにすることによって,談話セグメントの定義を明確にした. 本研究のアプローチでは,談話セグメントは基本的に談話参与者の意図により規定されるが,表層の言語情報が談話セグメントの境界やセグメント間の包含関係の同定に役立つ場合も多い.合図句の使用や,韻律情報などがその例である.特に,談話構造認識の手がかりを与える要素となる談話中の言語表現,すなわち,「わかりました」,「たとえば」,「最初に」,「いずれにせよ」,「〜といえば」,「すみません」などのような合図句は談話参与者の注意状態に変化を及ぼすとともに,発話者の意図が反映されており,セグメント間の関係を規定する要素となる.本年度はこのような合図句やそれに類似した言語表現による情報が談話セグメントの認定にどのように貢献するかを明らかにした.
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