平成16年度では平成15年度において合成したadamanololの水溶性類縁体であるwrenchnololの生物活性の評価を行った。まず、wrenchnololの水溶液中での立体配座を考察するために重水中でのNMRによるNOESY測定を行った。その結果、アダマンタンとトシル基のメチルとの間にNOEが観測されたことから水溶液中でwrenchnololもadamanololと同様にウレア結合がs-cisの立体配座をとっているということがわかった。次にwrenchnololとタンパク質(Sur-2)との相互作用を検討するため、wrenchnolol存在下にSur-2を加えて、その^1H-NMRのシグナル強度の減弱を観察した。この実験から、アダマンタン、インドール環、トシル基が特に強くSur-2と相互作用しており、アミノペンチル基はこの相互作用にはあまり関与しないことがわかった。これらのことからアミノペンチル基に様々な分子を結合させてもwrenchnololのSur-2結合能は失われること無く、新しい機能性分子を創生できると考えられる。そこでまずビオチンを結合させた分子を合成して、ビオチン-アビジンの親和性を利用したアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって細胞の核抽出からのSur-2の精製を検討した。銀染色法、ウエスタンブロット法のどちらにおいてもSur-2を捕捉出来ていることが確認できた。さらに、アミノペンチル基に蛍光基であるFITCを結合させた分子を合成した。この分子をガン細胞とともに培養後に蛍光顕微鏡で観察した結果、この分子が実際に細胞膜を通過して核内にも移行していることを確認できた。
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