低分子有機ゲル化剤は、これまでに百数十種類が報告されている。しかし、これら低分子系有機ゲル化剤は、明確な分子設計をされたものではなく、そのほとんどが合成中偶然発見されたものである。そこで本研究では、低分子有機ゲル化剤におけるゲル化に必要な因子またはゲル構造制御を目的として、中心部位に光応答性化合物であり構造体制御が可能なアゾベンゼンを、側鎖に水素結合部位を持つアミノ酸セグメントを有する化合物群の合成を行い、ゲル中での構造特性について検討した。これら合成した化合物群は、芳香族有機溶媒、オイル類、ゲル化の難しいとされる高極性溶媒であるクロロホルム、THFなどゲル化できる優れたゲル化剤であることを見出した。またUV-Vis測定より、ゲル中においてアゾベンゼン部位のπ-πスタッキング、アミノ酸部位の水素結合によりH会合体形成を形成していることを見出した。透過型電子顕微鏡観察から、アミノ酸のキラルに誘発されたらせん状繊維構造体を形成していること、また電界放出形走査型電子顕微鏡観察より繊維状会合体が三次元網目構造を形成していることが確認された。今後、特異的なナノ構造体を有する低分子有機ゲル化剤をテンプレートとし、特異的なナノ空間または転写された構造を有する酸化チタンなどの金属酸化物の調製を行う予定である。調製した特異的構造を有する金属酸化物の光触媒、抗菌作用について研究を行う。またアントラセンを中心部位に有する化合物の合成を行い、その光化学的特性について調べる予定である。
|