Plk1は高等真核生物で高度に保存されたセリン・スレオニンキナーゼで、M期の様々な現象に関与する。私は、Plk1によるリン酸化のコンセンサス配列を同定し、これを利用した探索からMyt1をPlk1の新規基質として見出した。Myt1はゴルジ体及び小胞体に局在することから、私はPlk1によるMyt1のリン酸化がM期のゴルジ体の断片化に関与するのではないかと考えた。高等真核生物では、ゴルジ体はM期になると断片化して細胞質中に分散することが知られている。本研究でHeLa細胞に恒常的活性型のPlk1を発現したところ、間期の細胞においてもゴルジ体の断片化が強く誘導された。さらに、同調したHeLa細胞に野生型のMyt1を恒常的活性型Plk1と共発現したところ、Plk1によるゴルジ体の断片化が強く誘導されたが、Plk1によってリン酸化される残基をアラニンに置換したリン酸化不能型Myt1とPlk1を共発現した細胞では断片化は著しく抑えられた。この結果は、Plk1によるMyt1のリン酸化がM期におけるゴルジ体の断片化に重要な役割を果たしていることを示している。また、Plk1によるリン酸化部位をグルタミン酸に置換してリン酸化をミミックしたMyt1では野生型のMyt1に比べてゴルジ体への局在が弱まり、小胞体や核膜への集積が観察された。さらに、内在性Myt1の細胞周期を通じた局在を観察したところ、Plk1が主要な基質をリン酸化するM期前期においてMyt1のゴルジ体近傍からの解離が観察された。これらの結果から、Plk1によるリン酸化を受けたMyt1がゴルジ体から小胞体へ局在変化を行い、結果Myt1がゴルジ体から消失することでゴルジ体の断片化が引き起こされるのではないかと考えられる。以上の結果を第27回分子生物学会年会(神戸)、およびスイスがん研究所(ISREC)会議(スイス、ローザンヌ)にて報告した。
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