研究概要 |
今年度は,前年度までに得られた知見をもとに,面不斉メタロセン類の触媒的不斉合成を試みた.申請書に示したアプローチ1(すなわち閉環メタセシスによる立体選択的な架橋メタロセン合成)については,前年度までにジアステレオ選択的な速度論分割に成功しているアリル位に一つメチル基を持つジアステレオマー混合物の基質,及び面不斉由来のジアステレオマー混合物に対して,キラルなGrubbs触媒を作用させることで実験を行った.反応自体はジクロロメタン中,良好に進行するものの,これらの基質で不斉を発現するには至らなかった.アプローチ2に示した不斉フリーデルクラフツ反応についても検討を行った.前年度までに合成したmen^*Cp_2Zr(OTf)_2触媒(10mol%)存在下,エナンチオトピックな反応点を有するホスファフェロセンに対して無水酢酸によるフリーデルクラフツ反応を行ったところ室温12時間の反応で4%eeの目的物を得ることができた.現在,温度の検討及び,より不斉環境が反応点近傍に構築される触媒(ebthi)Zr(OTf)_2の合成を行っている.一方,前年度に発見した鉄触媒クロスカップリング反応の拡張として,ジクロロエタンを再酸化剤とするアリールグリニャール試薬のホモカップリング反応の開発に成功し,報告した(Org.Lett.2005,7,491.掲載).触媒量のFeCl_3及び1.2当量のジクロロエタン存在下,ジエチルエーテル中で様々なアリールグリニャール試薬を高収率で酸化的にホモカップリングさせることができる.
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