研究概要 |
実用熱電材料として有望視されているBa-Ge系クラスレート化合物の詳細な結晶構造解析,およびGa添加による結晶構造と熱電特性の変化の相関について研究を行った.結晶構造解析には,高分解能透過型電子顕微鏡法と,SPring-8のX線放射光を線源とした粉末X線回折法を用いた.2元系Type-Iクラスレート化合物であるBa_8Ge_<43>は,Geの6cサイトの半分が空孔により占有されており,一般的な組成比である8:46がずれている.このGe空孔が規則配列することにより,Ba_8Ge_<43>は一般的なType-Iクラスレート構造の二倍のユニットセルを持つ超格子構造を有し,空間群Ia3^^-dに属することがわかった.一般的なType-Iクラスレート構造の6cサイトに対応するサイトは24cサイトと24dサイトであり,24cサイトが空孔に,24dサイトがGeにより占有される.電気伝導は半導体的挙動を示す.室温での熱伝導率はラトリング効果により約2(W/mK)と非常に小さいが,電気抵抗率が1(mΩ・m)と大きいため,熱電特性無次元性能指数は約0.06と小さい.Gaを添加したBa_8Ga_XGe_<46-X>に関して構造解析を行った結果,X=3まで超格子構造を有し,Ga原子は空孔サイト(24cサイト)を優先的に占有するが,Geサイト(24dサイト)のGe原子が欠損するため,全体の空孔量はBa_8Ge_<43>と等しいことがわかった.さらにGaを添加すると(X=4.5以上),超格子構造から一般的なType-Iクラスレート構造に変化した.X=16において電気抵抗率は約0.01(mΩ・m)まで低下し,また700℃でのゼーベック係数も約-200(μV/K)と非常に大きな値を示した.無次元性能指数は700℃において約0.5であり,Gaを添加することにより飛躍的に熱電特性を向上させることができた.
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