CG-NAPは、中心体およびゴルジ体に局在し、蛋白質リン酸化酵素PKN、PKA等の様々な分子と相互作用するアンカリング蛋白質である。これまでに、CG-NAPの中心体局在部位を含むC末端部分をCHO-K1細胞に発現すると中心体数が増加する傾向が認められること、またその部位に中心体複製に関与するとの報告があるcyclin Eおよびcdk2が相互作用することを見出している。CG-NAPの中心体複製における役割を追究するため、以下の検討を行った。 (1)CG-NAPのC末端部分を293T細胞に発現し免疫沈降を行ったところ、免疫沈降物に内在性のcyclin-cdk活性が検出された。またその活性は、cyclin Eおよびcdk2の共発現により上昇した。このことから、CG-NAPが内在性のcyclin E-cdk2と相互作用することが示唆された。 (2)CG-NAPのC末端部分およびcyclin EをCHO-K1細胞に共発現し、中心体数への影響を調べた結果、CG-NAPのC末端部分を単独で発現した場合と比較して中心体数が増加した。従って、CG-NAPとcyclin Eが協調して中心体数の増加を引き起こしていると推察された。 (3)CG-NAPのC末端部分にK1-Ras蛋白質の脂質修飾部位を付加することにより、細胞内局在を中心体から細胞膜に変化させた場合について、CHO-K1細胞の中心体数への影響を調べたところ、中心体に局在する場合と比較して中心体数の増加は抑制された。従って、CG-NAPの中心体局在が中心体数の増加に重要であることが示唆された。 以上の結果から、CG-NAPのC末端部分はcyclin E-cdk2を中心体に過剰にアンカリングすることにより中心体数を増加させ、CG-NAPが通常の細胞周期においても中心体複製に関与している可能性が示唆された。
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