研究概要 |
本研究では,複数の経路で取得した全天球動画像を選択的に利用者に提示し,仮想空間内で広範囲な屋外環境を移動出来るテレプレゼンスシステムの構築技術の開発を目的とする.これに対して本年度は,主に研究計画に挙げた1、提示画像の広視野化と高解像度化,及び2、ユーザインターフェースの直感性の問題に取り組んだ. 1、提示画像の広視野化と高解像度化を実現するために,複数のカメラを放射状に配置し全天球動画像を高解像度に取得できる全方位型マルチカメラシステムを利用する.前年度は全方位型マルチカメラシステムにより得られる画像からの違和感のない提示画像の生成に必要な幾何学的及び光学的なキャリブレーション手法を開発した.本年度は開発したキャリブレーション手法の評価を行なった.これにより開発した手法を用いることで高精度に全方位型マルチカメラシステムのキャリブレーションが可能であることを確認した.これらの研究成果は,国内学術論文誌に投稿し掲載されている. 2、ユーザインターフェースの直感性を改善するために,開発したキャリブレーション手法により生成される高解像度な全天球動画像を利用者の歩行動作に合わせて,視野全体を覆うように提示するテレプレゼンスシステムを開発した.本システムでは12台のプロジェクタにより高解像度に映像を提示可能な没入型ディスプレイと,利用者の歩行移動をキャンセルし,常に視点位置をディスプレイ内の中心に維持させるための歩行装置を用いる.本年度の研究により複数のプロジェクタが同期し,利用者の歩行量に応じた映像提示が可能であること,及び利用者が周囲を見回しながら遠隔地の仮想空間内で1次元的な歩行移動が可能なことを確認した.これらの研究成果は,国内会議及び国際会議で発表している.今後,歩行動作の検出精度の改善,2次元的な視点移動のための任意視点合成手法の開発を行う.
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