生体分子は様々な翻訳後修飾を受けることで機能変換が行われている。翻訳後修飾因子SUMO(small ubiquitin-related modifier)はユビキチンに似た3次元構造を持つタンパク質であり、細胞内の様々な標的タンパク質のリジン残基にイソペプチド結合し機能変換する。SUMO修飾はタンパク質の局在性・転写・シグナル伝達・DNA修復などに関わることが明らかにされてきており、エピジェネティクスおよび細胞系譜の制御に、ユビキチンとは異なった役割を果たす非常に重要な翻訳後修飾因子であることがこれまで示されてきている。しかしながら、標的タンパク質にSUMOがイソペプチド結合したタンパク質を容易かつ大量に合成する方法がないため、SUMO化タンパク質の生化学的解析・構造学的解析が進んでいない。今回我々は、大腸菌内で、標的タンパク質とSUMO修飾反応系のE1酵素(Aos1/Uba2)、E2酵素(Ubc9)、SUMO-1 (またはSUMO-2)を共発現させることでSUMO化タンパク質を大量に合成し精製することを試みた。1リットルの大腸菌を培養することで約2.5mgのSUMO-1化RanGAP1(Ran GTPase activating protein 1)を合成し精製することができた。今回我々はこの精製SUMO-1化RanGAP1を用いて、さらに、SUMO修飾とタンパク質の局在性の制御に関する生化学的実験を行った。SUMO-1化RanGAP1はRanBP2(Ran binding protein 2/Nup358)のIR(internal repeat)ドメインに特異的に相互作用することが知られているが、RanBP2のIRドメインの高頻度自己SUMO-1化によりSUMO-1化RanGAP1が脱局在化することが示された。これによりSUMO修飾によるタンパク質の局在化・脱局在化の新たなメカニズムを示すことができた。
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