研究概要 |
本研究は、TSEs一般で発症経過とともに発現が著しく低下する AHSP/EDRF発現動態に基づいた牛BSE感染スクリーニングの間接的手法開発を目指し、その基盤となるAHSP/EDRF発現変化の分子機構解明を目的としている。 15年度は、初期の目標として挙げたAHSP/EDRFの発現変動がPrP^<Sc>の直接の作用によるものか否かを明らかにしていくため、必要となる予備実験ならびに材料作製に着手した。 1.抗AHSP抗体の作製 マウス脾臓からmouse AHSP (mAHSP) cDNAの単離を行い、得られたmAHSP cDNAをpGEX6P vectorに組み込んだ後、大腸菌BL21で発現させて、GST融合タンパク質(GST-mAHSP)の合成を行った。合成したGST-mAHSPを、GST融合タンパク質精製カラムを用いて精製した後、GSTを切断し、さらにゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行うことで、抗体作製に必要な量、純度のmAHSPを得ることができた。現在は、ウサギに接種して免疫を行い、抗体価の上昇を待つところである。加えて、bovine AHSP (bAHSP)についてもウシ胎子肝臓からbAHSP cDNAの単離を行い、マウスと同様に、抗体作製用bAHSPの精製を行っており、間もなくウサギへの免疫を行う予定である。 2.マウス赤白血病(MEL)細胞におけるAHSPおよびPrP mRNAの発現 マウス赤白血病(MEL)細胞においてRT-PCRにより、AHSP, PrPのmRNAレベルでの発現を確認した。今後は、作製した抗体を用いたイムノブロット法、免疫組織化学的手法により、MEL細胞におけるAHSP, PrPのタンパク質発現と細胞内局在を調べ、in vitroでのAHSP発現変化とPrP^<Sc>の関係を明らかにしていく予定である。 3.末梢血の成熟赤血球におけるプリオンタンパク質(PrP)の発現 ヒトおよびウシの末梢血から赤血球膜を調製し、市販の抗PrP抗体(6H4)を用いてイムノブロットを行った。その結果、過去に報告されているようにヒト赤血球膜からはPrPが検出されたが(Horada et al.(2000)Br.J.Haematol.110,472)、ウシ赤血球膜からは検出されなかった。今後は、スクリーニング検査への有効性を調べるために作製した抗AHSP抗体を用いて末梢血におけるAHSPの発現を検索する予定である。
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