研究概要 |
私は、すばる望遠鏡の補償光学を用い近赤外線で遠方宇宙の深撮像、および高赤方偏移にあるクェーサー吸収線系の直接撮像を行い、銀河の形成、進化に対する知見を得ようと試みている。 遠方宇宙の深撮像では、平成15年3,4月に観測を行い、計26時間積分の撮像データを得ることができた。これによりK'(2.12μm)〜24.7等(5σ)という、これまでよりも約1等級深い検出限界を達成した。さらに、0.18秒角というハッブル宇宙望遠鏡に匹敵する高い空間分解能も達成した。このデータから、検出した銀河の見かけの明るさごとの計数を過去の観測データと比較した結果、1等級深くなっても銀河計数はほとんど変わらないことを示した。このことは、我々の到達した範囲では、銀河の個数密度に大きな変化はなかったことを示唆している。もう一つのテーマである、1<z<3の銀河の形態進化の研究では、高赤方偏移銀河の形態を2次元のプロファイルフィッティングにより決める手法を確立し、現在その手法を用いて検出された銀河の形態分類を行っている。この分類方法は、K'バンドで約22等まで有効であり、z<3の銀河の形態をとらえるのに十分な深さまで到達しているといえる。以上の結果は、現在論文としてまとめており、まもなく投稿する予定である。 吸収線系の直接撮像では、今年度で10天体以上の撮像データを増やし統計的に十分な量まで達している。今後、これらの観測データの解析を行い、銀河の形成段階にあると考えられる吸収線系の明るさ、形態といった性質をまとめていく。 レーザーガイド補償光学系の開発は、海外機関へのデザインレビューを終え、現在それぞれのコンポーネントの最終仕様を決定していくフェイズにある。
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