金ナノコンタクトの電流-電圧(I-V)特性では、非線形性を示唆する結果がある。しかし、原因についてはわかっていない。非線形性の研究では、バイアスを数百mVまで印加する。ナノコンタクトを流れる電流密度は〜10^<11>[A/cm^2]にまで達する。このとき、ナノコンタクト形状は、エレクトロマイグレーションや、電極部のジュール熱による影響をうけると予想される。しかし、これまでの研究では、非線形性とコンダクタンスを決めるコンタクト形状関係を調べていない。 本研究では、STMホルダーを組み込んだ超高真空透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて金ナノコンタクト形状とI-V特性の同時観察を行った。超高真空内(〜1.0×10^<-7>Pa)で金線(太さ0.25mm99.99%)を切断。その後、STMを用いて、両電極の押し込み・引き離しを行うことでナノコンタクトを作製した。TEM像(1フレーム30fps)とI-V計測値を同期させる。印加電圧(0〜0.3V)は、1step、0.01Vで変化させた。 この結果、コンタクト領域が短いナノコンタクト(長さ<1nm)と、領域が長いナノワイヤ(>1nm)では、I-V特性に違いがみられた。ナノコンタクトでは、電圧増加につれてコンタクト径が太く変化した(コンタクト半径が0.5nm@0Vから1nm@0.27Vへ変化)。このとき、0.2V以上ではバイアス1stepごとに径が太くなり、三次関数でフィットできる非線形I-Vを示した。一方、ナノワイヤでは、径は一定値を保ち、線形性を示した。以上の結果と理論値との比較により、径が太ることで非線形性が現れることがわかった。どちらの場合でも、電極間が0.5nm以上近づく現象を確認。特に、ポイントコンタクトの場合、電極の近づきに対応して径が太くなった。これは、電極間距離が近いために径が太ることを示唆。電極間が近づく現象は、電流を流すことで現れ、電流(I)もしくはパワー(IV)に依存して電極が近づくことを見出した。
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